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テイスティングスプーンを使う訳。
公開日:2023年11月2日更新日:2023月11月03日
カテゴリ:テイスティング
ボクは焙煎士。
ローストによって表現をするためには、仕入れの素材選びは最も神経を使わなければならないスキルとなっている。
COE評価は、仕入れで素材を選ぶためにある指標である。
そしてコーヒーのカッピングでは、ほとんどの関係者はテイスティングスプーンを使用し、コーヒーの液体を強く啜るという行為をする。
それはなぜか?
そういうことを考えたことがあるだろうか。
ボクはそういうところに引っかかってしまう性分なのである。
必要が無いのならば、使わなくてもよいと考えてしまうからだ。
では、なぜテイスティングスプーンを使い、強く啜るという行為を仕入れのテイスティングの際には使うのか?
生豆問屋の業者さんも述べていたのだが、スプーンを使って強く啜るようになってからフレーバーが見えるようになったと言っていた。
そうなのだ、スプーンを使って強く啜ることで、通常では見えにくいフレーバーを見えやすくするために、それはあるのだ。
そして、それは「素材のポテンシャルだけを見る」ために、そのようなことをするようになったのだと考える方が正解であろう。
言い換えるのならば、素材だけを見るということは、コーヒーで感じる素材以外のローストのフレーバーを見ないようにするためでもあるのだと言える。
では、素人の人たちがコーヒーテイスティングでコメントできないのはなぜなのか?
それは、スプーンを使って強く啜らないからだと言い換えることもできる。
そうなのだ、コーヒーの味わいの情報量は大きすぎるのだ。
だから、重なり合ういろんな風味の情報の中で「素材だけを見る」ということは、とても難易度の高い能力が必要となるため、スプーンを使うことで「素材だけを見る」という照準を合わせる役目であるのだとも言える。
プロは、その大きすぎる情報量の見なければならない部分と、見ない部分を意図的に絞って感じるようにトレーニングをしている。
そのためにテイスティングスプーンを使用していると言ってもいいのだと思う。
ただし、ボクは焙煎士である。
仕入れのためのカッピングではスプーンを使い、素材のポテンシャルを見抜かなければならないのだが、味づくりのカッピングではローストによるコーヒーの成り立ちのバランスを見なければならないので、仕入れのためのテイスティングと、味づくりのためのテイスティングでは、見ているポイントが異なるのだ。
コーヒーテイスティングを学ぶのであれば、まずはスプーンを使って強く啜るトレーニングをしていくことが近道である。
だが、それで慣れてしまうと、今度はローストでの味づくりの視点がずれてしまう。
要は異なる2つの視点を手に入れることが、重要なのである。
感覚を磨いていくことは、時間がかかる。
しかし、それ抜きでは感覚で良いものを作ることはできないことも事実である。