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あり得ないからこそ、それを目指す。
公開日:2023年9月30日更新日:2023月09月30日
カテゴリ:焙煎の味づくりのこと。
コーヒーの味づくりでは、ローストの設計図が味づくりとなっている。
そのローストの設計図はいわば味づくりのバランスであるとも言える。
コーヒーに登場するフレーバーと味わいのすべてのバランスがその設計図に集約されている。
だから、焙煎士はまずは設計図を描き、そして実際に設計図とおりのローストをすることが求められる。
そして実際にローストされたコーヒーをカッピングして、思い描いたとおりの味づくりが出来ているのかを検証するのだ。
しかし実際は、思い描いたとおりのローストが出来ないので、コーヒーのローストは面白くもあるのだ。
これは、コーヒーのローストをしたことが無い人には、その難しさは伝わらないものでもある。
先日書いた、「どのような甘さを登場させたいのか?」という味づくりも、このローストの設計図から登場させることになる。
「口に含んだ瞬間から感じられる甘さ」と「甘い余韻が長く続くという甘さ」も設計図から登場させなければならない。
しかし、設定としては「口に含んだ瞬間から感じられる甘さ」と「甘い余韻が長く続く」という設定は別々の設定である。
そして、そこに良質さを求めるとなると、その設計図は恐ろしいほどに難しくなる。
だから、良質さを求める場合には、明るい爽やかなフルーツ感のある酸味を求めることを一般的にはするのだ。
言い換えると、透明感のある明るい爽やかさのあるフルーツの酸味と同時に、「口に含んだ瞬間から感じられる甘さ」と「甘い余韻が長く続くという甘さ」の2つのタイプの異なる甘さを登場させることは、あり得ないのだ。
フルーツの世界でも、フレッシュさを感じる酸味が登場しつつ、完熟の甘さがあるフルーツはまず存在しない。
あり得ないからこそ、そういったフルーツの存在は素晴らしいと評価されるのだ。
しかし、あり得ないのだけれど、まず存在しないのだけれど、世の中に稀に存在している。
それこそが、本当に良質なものでもあるのだ。
だからこそ、それを目指したいと思っている。