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味づくりを振り返ってみると。

公開日:2023年5月28日更新日:2023月05月28日
カテゴリ:焙煎の味づくりのこと。

味づくりを振り返ってみると。

このくらいの季節から、ローストによる味づくりを「爽やか」にできるので、ボクはこれからの季節の味づくりが好きだ。
これは、コーヒーのローストに携わっている人でないと、その意味は解らないことだろう。
それくらい、コーヒーの味づくりはローストによって印象をコントロールしているのだ。

ボクのこれまでのローストの味づくりを振り返ってみることを最近は特に意識して取り組んでいる。
先日も書いたように、2018年のJCRC決勝に残れたことが大きな転機となっていることは間違いない。
それ以前とそれ以降では考え方に大きく変化があったのだと思っている。

それ以前のローストで取り組んでいた「透明感」は今から思えば、”くっきりとした”という透明感を登場させたくて取り組んでいたように思う。
その当時は今のようにフレーバーの景色を感じ取れていなかったため、口の中で感じる味づくり目線が優先で透明感を登場させようと取り組んでいたように思う。
そのため、ローストのフレーバーもくっきりと素材の酸味と合わさるようにシャープに登場させていたように思っている。
なので、設定を一歩間違えると、マットな茶色になりやすかった。

そして2018年の競技会以降のローストでは、透明感の意味には「透ける」という意味の理解に気づけたことで、次は「透ける、明るさ」を取り組むことになった。
しかし、これも後に気づくことになるのだが、透ける”明るさ”は柔らかくなり過ぎる傾向にあり、その以前の”くっきりとした”というものとは対極にあり、どちらかを登場させようと考えると、どちらかが登場しなくなるのだと気づいた。
それが言葉の持つ対極の意味なのである。

その後、ゴッホ展に出向いた時に知った表現におけるロジックは、表現の成り立ちにおいてとても重要なことを語っていた。
ゴッホが師匠から教えられたことを、興奮しながら弟に手紙を送っていたのだ。
その手紙に記されたそれは、表現においてとても根本的な基礎の部分のロジックだったのだ。
この段階で、その基礎的な部分の表現に気づいたことは大きかった。

そして、日本画の秋野不矩美術館に出会い、より心に届く”明るさ”を登場させるためのロジックを秋野不矩さんの絵とその美術館から学ぶことになった。

そして日本風景の版画家の吉田博さんの版画という手法は、ローストによる色の積み重ね方のヒントとなった。

そして去年、東山魁夷さんの絵と出会い、その静寂の表現に感嘆とした。
そしてボクが求めていたのは”静けさ”だったんだと気づき、東山魁夷さんの絵から「静けさ」を登場させるロジックを学ぶことへと繋がった。

これらの出会いの流れは、すべて繋がっているものであると考えることができる人ならば、すべてを繋げて考えることで、すべての思い描く表現は成し遂げることができるものであることに、いずれ気づくものである。

ただ、難しいことには間違いなく、季節の移り変わりがそれをいっそう難しくしている。
記録を残していれば、振り返ることで「なぜ、あの時そうしたのか?」という疑問は、核心へと繋がる糸口であることにも気づくことになる。

味の再現性が、味づくりに求められるものである以上、記録を残すことは正しい味づくりであるのだと思う。
それがなかったとしたなら、自分の頭の中の曖昧な記憶だけで味づくりをしなくてはならないからだ。
記録はとても大切なアイテムであることを、振り返ることでいま実感している。

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