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バランス。
公開日:2022年10月7日更新日:2022月10月07日
カテゴリ:焙煎の味づくりのこと。
味づくりで「バランス」が大事とよく言っています。
しかし、味づくりのバランスの定義は奥が深い。
まず感覚として味は、口の中で感じるものなので「味覚」「嗅覚」「触覚」の3つの感覚が絡んでいる。
味覚を主としたバランス。
香りの情報のバランス。
舌や粘膜で触れて感じるバランス。
そして、その3つの感覚を合わせて見た場合のバランス。
これからの季節はローストの甘さを上品に添加した方がコーヒーらしく、そしてそのローストの甘さが温もり感やほっこり感を醸し出してくれるものでもあるので、「良質なローストの甘さ」も同時に表現したいと考えるような季節となる。
そうした場合に、単純に豆に熱量を与えればよいという訳にはいかない。
「単純に」というのは、熱量を与えれば甘さは登場するのだが、ローストの甘さの茶色は濁り易い。
濁りは「ザラつき」が登場してしまう。
なので、良質なうっとりするような透明感を演出する甘さを登場させるためのローストのバランスの設定は、難解なパズルのように複雑で、そのためにはピンポイントの設定を施す必要がある。
だからこそ、そのような良質な甘さを登場させることができるコーヒーショップはとても少ない。
そして、そのような良質なバランスを安定して登場させることに職人としての仕事の取り組みが絶対的に必要になる。
しかし、一般消費者のニーズとしては甘さの強さを求める人たちが圧倒的に多い。
上品な透明感の登場している甘さでは、物足りなさを感じるのでしょう。
すると、商売としては多少濁りのある甘さを登場させていた方が売れるので、そういうローストを売れるためにしているショップはとても多い。
でもボクは感覚としても良質さが理解できてきているので、売れるからと言って、質を落とした味づくりをしたくはない。
それはローストの競技会で日本3位にならして頂いたことも関係している。
良質なローストとは、どんなものであるのか?
だからこそ、きちんとした良質なモノを作り、それを求める人たちに提供するお店でありたい。
この考え方は、もう開店当初から取り組んでいること。
そうした良質さの探求をしていることで、この数週間の間に「良質な甘さ」と関係性がある「酸味の熟度」に対してのローストにおける設定のピースを発見した。
この発見の意味はとても大きく、「酸味の熟度」は味づくりの雰囲気や印象までも左右させるポイントとなる。
そして、「酸味の熟度」は甘さや粘性に対しても働きかける部分でもある。
この部分での味づくりの可能性のためには、フルーツの酸味の熟度における成り立ちを理解していかなければならないので、ワンランク上の目線が必要になってくる。
そのために、フレッシュなフルーツを毎日意識をしながら食べている。
そして、酸味の熟度は、仕入れとローストで左右するポイントであり、抽出で左右されることはない。
これが何を意味しているのか?
感覚のよい消費者なら意味がわかるはずである。