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静けさの表現。

公開日:2022年9月23日更新日:2022月09月24日
カテゴリ:焙煎の味づくりのこと。

静けさの表現。

8月に東山魁夷さんの日本画を見てから、あの「静けさの透明感」が心から離れずにいた。
その日本画を見た瞬間に、なぜだか2018年の焙煎の競技会の予選で提出したコーヒーの面影と重なり「あの時のローストの透明感は”静けさ”の表現だったんだ」と改めて理解をする瞬間でもあった。
そして、あの2018年の予選で提出したローストの面影を再び探ることになった。

焙煎記録は残してあるので、その当時の焙煎記録を読み返して唖然とすることになる。
「そんなローストしてたんだ。」と。
ボクの記憶の中のローストとはまったく違うローストをしていたからだった。

しかし、あの当時のローストは今から思うと未熟で、ローストの最低限の骨格の部分でローストをしていたのだが、その骨格の部分が「静けさ」を表現していたことに気づく。
そして、そのローストの「静けさ」の成り立ちは、ボクが東山魁夷さんの日本画を見て思った成り立ちとリンクをしていたので、それは確信に変わっていった。
実際にその当時のローストを現在のローストにはめ込んでローストしてカッピングしてみると、そこには予選で使用されたコーヒー豆の「ポテンシャルの高さ」があってこそ成り立ったローストであったことが今回判明し、すべてのスペシャルティコーヒー豆で使える技法では無いことも判明した。

しかし、「静けさの表現」の背景にあるものは、なんとなくは理解できている。
「透明感」の表現と「色調と彩度」で成り立っているのだと分析をしている。
そして、これはボクが日本人であり、日本で暮らしてきたからこそ、そこの美しさが尊いのだと思えるのだとも思っている。
だから、この「静けさの表現」は、外国人には表現できない。
文化的な背景があってこそ、そこが理解できるものであるのだと思っている。

なので、2018年の頃のローストの技法は使えないが、静けさの表現の成り立ちの分析から、他の技法を用いてそれが表現できるのではないかとその可能性を追いかけている。

諦めずに、そんなことを四六時中考えていると、いずれヒントが訪れることになる。
ボクは今まで、ずうっとそんな取り組みで味づくりの技法を発見してきたから、そのヒントを見つけるキーワードも熟知している。
そして、意外と早くそのヒントが訪れることになった。

8月に「静けさの透明感」に気づき、ひと月くらいで、また新しい技法の可能性とローストの成り立ちの理解の幅が広がっている。
これからのローストは、より豆の持つ個性をピンポイントで見つけて、それを活かす表現になっていく。

まだ完璧ではないものの「静けさ」は登場するようになってきている。
そして、不思議なことにコーヒーの液体の色も変わってきていることに気づく。
透明感のあるキレイな液体のグラデーションが登場している。
それを見て、良質さとは「美しさ」なのだと改めてそう感じている。

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