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ローストのアプローチの仕方。
公開日:2022年7月28日更新日:2022月07月29日
カテゴリ:焙煎の味づくりのこと。
過去にも何回か書いたことがあるのですが、「JCRC 2018」の予選は珍しく大会本部から指定されたコーヒー生豆5kgが郵送され、その生豆をローストした後に日程指定で送り返して、大会の審査員がジャッジをして上位6名が予選通過となるシステムでした。
それ以降、そういうレギュレーションの予選はなく、定められた場所で定められた焙煎機と大会側が用意をした生豆を使うレギュレーションに変更している。
何が言いたいのかと言うと、普段から使っている焙煎機で予選を戦うことができたこと、そして2018年の予選通過ではボクともう一人Fujiの焙煎機を使って予選を通過していた人がいたことがわかった。
Fujiの焙煎機はその取り扱いが難しくて、ローストのクリーンさを表現することの難しさや、植物性のフレーバーが登場しやすいこと、明るい酸味を表現することが難しいので、多くのロースターは海外製の対流性が大きかったり、蓄熱性が豊かだったりする焙煎機に乗り換えていく。
そういった背景があり、当店でも焙煎機の改造を施しているくらい。
だけれど、もう一人のFujiの焙煎機で予選を通過したFくんの焙煎機はその当時ノーマルの焙煎機で予選を通過してきた。
この凄さは、ボクにはある意味驚きだった。
なぜ、ノーマルのFujiの焙煎機で、それほどまで良質なローストができるのか?
そして、決勝を戦った人ならば知っているのですが、決勝だけは他の競技者がローストしたコーヒーをブラインド(誰がローストしたのか解らないようにして)にはなりますがカッピングができる。
しかも、ローストも間近で見ることもできるのです。
この2つが、今になってボクにはかけがえの無い経験で、あれから4年が経つのですが、ようやくFくんのローストでの味づくりの意味が理解できてきた。
そう言う理由があって、そのようなローストをしていたことの意味がようやく理解できたのです。
あの時ボクのローストを見ていた人には、それはそれで発見があったことだと思うのですが、ボクのローストとFくんのローストは根本的なアプローチの仕方がまったく異なるローストだった。
ボクのローストは、ベースの透明感を表現するアプローチだったのに対して、Fくんのアプローチは表層的なフレーバーを明るく透明にするアプローチ。
ボクもFくんも、Fujiの焙煎機を使っていたからこそ、透明感が登場しづらく、明るい酸味が登場しづらい焙煎機だからこそ、そこを試行錯誤しながら編み出した技法だった。
ただ、ボクとFくんではアプローチの仕方がまったくちがっていたのですが、方向性としては同じところを向いていた。
その背景にあるローストの成り立ちをようやく理解が出来るようになったから言えるのだが、その両者を合体させるロースト技法がようやく出来上がってきた。
それが理解できるようになったのも、Fくんが同じ決勝の場に居たから。
たぶん、Fくんもボクのローストを見ていたと思うので、ボクと同じようにそれに気づいたなら、更なる進化をしているはず。
しかし、Fujiを使わなくなった人たちには、そこまでの技法を使わなくてもある程度のレベルの透明感と明るい酸味が登場するので、その技法の意味を追い求めることはしないのだと思う。
しかし、対流性が大きかったり、蓄熱性が豊かだったりしたとしても、ローストの成り立ちの「論理は同じ。」
より繊細なローストが施すことができれば、それは感動という味づくりができるはずなのである。
そして、だとしたならなぜFujiの焙煎機を使うのか?
それは、透明感と明るさの反対に位置するのは広がりと粘性。
Fujiの焙煎機は広がりと粘性の甘さが登場しやすいので、そこに透明感と明るい酸味を纏わせることができるのであれば、異質な味づくりが可能になるから。
それは、対流性が大きかったり、蓄熱性が豊かな焙煎機では登場しづらいものでもあるのです。