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アナエロビック・ファーメンテーション<シトラススウィートネス>のフレーバーの解説。

公開日:2022年5月15日更新日:2022月10月31日
カテゴリ:テイスティング

アナエロビック・ファーメンテーション<シトラススウィートネス>のフレーバーの解説。

今回仕入れた「コロンビア・サントゥアリオ農園・アナエロビック・ファーメンテーション・ウォッシュド」で登場するフレーバーの成り立ちの解説をしたいと思います。

まず「アナエロビック・ファーメンテーション」プロセスについての解説から。
アナエロビック・ファーメンテーションとは、嫌気性発酵という意味で、「空気を遮断した状態で発酵させる」というプロセスになります。

今までのコーヒーの生産処理過程で登場してしまう発酵の香りは、ネガティブ(ひねた香り)なフレーバーを登場させないように創意工夫がなされてきました。
スペシャルティコーヒーの加点のためには、発酵の香りをポジティブに登場させることが求められるためです。

そうしたスペシャルティコーヒーの生産処理の発想から、パルプドナチュラルのハニープロセスが登場し、そしてその着眼点から嫌気性発酵の可能性が取り上げられ、そのプロセスが次世代の生産処理の可能性の拡大へと繋がっています。

アナエロビック・ファーメンテーションは、複雑なフレーバーが導き出せるプロセスであることが2020年のCOEコスタリカで世界に広がったことから、「アナエロビック」と呼ばれるプロセスが世界のスペシャルティコーヒー生産者へと伝わり、現在進行形でそのプロセスは進化の過程でもあり、今後さらなる進化が期待されています。

嫌気性発酵は、空気を遮断した状態で発酵させるため、気密性の高い樽に、収穫されたコーヒーチェリーを詰めます。
この時に、果肉がついた状態で入れるとその後の生産処理はナチュラルになり、果肉を剥いてから入れるとその後の生産処理はパルプドナチュラルまたはウォッシュドになり、アシディティやフレーバーの登場の仕方も変わってくるため、「アナエロビック」+「生産処理方式」と言う構図のフレーバーの成り立ちが構成されていることが理解できます。

そして、嫌気性にするために、コーヒーチェリーとコーヒーチェリーの隙間に空気が入っているので、嫌気性にするためには、液体を一緒に入れることで、コーヒーチェリーの隙間の空気を入らないようにすることが出来ます。ですので、どのような液体を満たすのか?がまたフレーバーを変化させる材料にもなります。
空気を完全に抜くために「不活性ガス(炭酸ガスなど)」を充填したりする処理方法もあるそうです。

そして発酵が進むことで、炭酸ガスが発生し、樽の中で発生した炭酸ガスが行き場が無いために圧がかかり、コーヒーの種子にチェリーのフレーバーや一緒に入れた液体のフレーバー、そして発酵による香りが浸透していくため、複雑なフレーバーが登場するようになるというプロセスです。

そして、このアナエロビック・ファーメンテーションを行った後に、生産処理の工程へと移ります。

今回仕入れた、「コロンビア・サントゥアリオ農園・シトラススウィートネス」という精製で登場するフレーバーの成り立ちを解説します。

素材は「イエローブルボン種」を使用しています。
1・糖度20度以上のコーヒーチェリーを選んで収穫します。
2・収穫したコーヒーチェリーを1時間ほどキレイな水で洗浄します。

3・コーヒーチェリーの状態で、機密性の高いタンクに「モスト」と一緒に入れ、炭酸ガスを吹き込んんだ状態で密閉し65時間ほど嫌気性発酵を行います。(カーボニックマセレーション:炭酸ガスを吹き込んで行う嫌気性発酵)
(モスト:コーヒーの果肉と果皮、ミューシレージで作られた特別なジュース状の液体。モストには酵素がたくさん含まれるため発酵過程で複雑なフレーバーが登場する。)

4・コーヒーチェリーを剥ぎ取り、再び「モスト」に浸して嫌気性発酵を行います。(20~22時間)
5・パーチメントを冷水で洗浄する。

6・14日間かけて、アフリカンベットで乾燥させる。

上記のプロセスが、今回仕入れたシトラススウィートネスと呼ばれている精製になります。
フレーバーの成り立ちの構成では、下記の4つのフレーバーが登場しています。
a・素材のフレーバー
b・「1」の果肉のフレーバーと「3」の「モスト」のフレーバーがカーボニックマセレーションにて、浸透する。
c・「4」の「モスト」のフレーバーが嫌気性発酵にて更に追加される。
d・「5」の生産処理の特徴が登場する。

a ~ dの「素材(種子)」+「素材(果肉)+モスト+嫌気性発酵」+「モスト+嫌気性発酵」+「生産処理」というとても複雑なフレーバーが登場する構図が理解できる。

今回の工程では、同じ種子で2回の嫌気性発酵を施している。
1回目の嫌気性発酵ではコーヒーチェリーのまま、2回目の嫌気性発酵では果肉を剥いてから行っている。
それぞれのモスト(1回目と2回目)をどのような品種のものを使っているのかで、登場するフレーバーが変化する。

フレーバーをチェックすると、トロピカルフルーツ・シトラス・ぶどう・りんごなどのとても複雑な華やか〜爽やかなフレーバーの印象があることが伝わり、このアナエロビックの可能性が伺える。

今回のこのコロンビア・サントゥアリオ農園・アナエロビックで登場しているフレーバーは、トロピカルフルーツ系のカカオフルーツ(ライチっぽい)のフレーバーです。
シトラス系では、黄緑色のライム(メインで登場しています。)、白いグレープフルーツ(少し冷めた温度帯から登場します)。
タータリックでは、白いブドウ。
マリックでは、ふじ系のりんご(上品なバラの香りを含む)

そして、アシディティはシトリックのライムが最後までしっかりと主張をしています。
これらが、ひと口含んだだけで、余韻までにさまざまに変化をしています。
あと、ボクが感じ取れないだけで、いろんな花の香りや、スパイスの香りも発酵による香りとして登場していると推測されます。

これからより多くのアナエロビックが登場してくるようになると思われるため、テイスティングでインプットするカテゴリの幅を広げていかなくてはいけないと思っています。
フルーツだけではなく、フローラル(花の香り)やスパイスの香りのインプットが必要であると理解をしています。

しかし大切なことは、フレーバーの複雑さではありません。
良質な「爽やかで明るい印象のフルーツ感」です。

この、コロンビア・サントゥアリオ農園のアナエロビックには、それが感じられるために仕入れました。
すべてのアナエロビックが、良質で複雑な爽やかさのあるアシディティ(酸味特性)が登場している訳ではありませんので、お間違えのないように注意してください。

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